AIが生成し、紙が証明する。12のイノベーション・ウェーブ (The 12 Innovation Waves) に学ぶ、これからのマーケティングと印刷の役割
- 本間 充/マーケティングサイエンスラボ所長

- 2025年12月26日
- 読了時間: 3分
更新日:1月14日
生成AIが文章も画像も一瞬で作れるようになった今、「印刷」は不要になるのでしょうか? いいえ、逆です。デジタル空間がAIによる無限の情報で溢れかえるからこそ、物理的な実体を持つ「印刷物」の価値は再定義され、高まろうとしています。 シリーズ最終回となる本記事では、12のイノベーション・ウェーブ (The 12 Innovation Waves) の分析に基づき、AI時代の先にある商業印刷と広告の未来について提言します。
1. デジタルは「フロー」、印刷は「アンカー(信頼の錨)」
AI時代において、情報は空気のように軽く、そして不確かなものになります。フェイクニュースや精巧なディープフェイク動画が溢れる中で、私たちは何を信じればいいのでしょうか? ここで印刷物の出番です。物理的に印刷され、配布されたものは、後から改ざんすることが困難です。企業がコストをかけて物理的に発行したカタログや会社案内は、その企業の実在性と信頼性を示す「アンカー(錨)」となります。 デジタルで認知し、アナログで信頼を確定させる。この役割分担がより明確になるでしょう。

2. 「情報の運搬」から「体験の提供」へ
かつて印刷の役割は「情報を運ぶこと」でしたが、それはスマホの仕事になりました。これからの印刷の役割は「体験(エクスペリエンス)の提供」です。 高級な紙の手触り、インクの匂い、箔押しの輝き、開封する時のワクワク感。これら五感に訴える要素(ハプティクス)は、Retinaディスプレイがいかに高精細になっても再現できません。 商業印刷は、効率的な情報伝達メディアから、ブランドの世界観を体感させるプレミアムなメディアへとシフトします。
3. AIと共創するクリエイティブ
制作プロセスにおいては、AIは最強のパートナーになります。キャッチコピーや画像生成はAIが行い、人間は「どの紙に、どんな加工で印刷すれば、最も心が動くか」という物理的な設計(エンジニアリング)に注力するようになります。 データ(Cyber)と物質(Physical)を融合させる「フィジタル」な世界で、印刷技術はデジタルコンテンツを現実世界に「受肉」させるためのインターフェースとなるのです。

結論:変わり続けることだけが変わらない
12のイノベーション・ウェーブ (The 12 Innovation Waves) を振り返って分かることは、商業印刷は一度たりとも「同じ場所」に留まらなかったということです。 蒸気機関、電気、コンピュータ、そしてAI。常にその時代の最先端技術を取り込み、自らの形を変えてきました。
印刷の発行部数は減るかもしれません。しかし、マーケティングにおける「ラストワンマイル」——すなわち、消費者の手に触れ、心を動かす瞬間——を担うプレイヤーとして、商業印刷は形を変えながら生き残り続けるでしょう。 「情報を時間と空間を超えて伝える」というミッションがある限り、印刷のイノベーションは終わりません。

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