Macが印刷工場を机の上に持ってきた!12のイノベーション・ウェーブ (The 12 Innovation Waves) で振り返る、ITと自動化の激動期
- 本間 充/マーケティングサイエンスラボ所長

- 2025年12月24日
- 読了時間: 3分
更新日:1月14日
1980年代以前、印刷物を作るには「写植オペレーター」「製版マン」といった特殊技能を持つプロフェッショナルたちが、巨大な専用機械を操る必要がありました。 しかし、今日では誰もがPC一つで美しいチラシや冊子を作ることができます。この劇的な「民主化」はどのように起きたのでしょうか? 本記事では、12のイノベーション・ウェーブ (The 12 Innovation Waves) の第3次産業革命期(第7波〜第9波)に焦点を当て、アナログからデジタルへの移行と、業界構造を破壊したDTP革命について解説します。
1. コンピュータが「文字」と「画像」を飲み込む
第7波・第8波(1950s-1980s)は、印刷工程の「電子化」が進んだ時代です。 まず、鉛の活字を拾う作業が写真植字機に置き換わり、やがてコンピュータ制御の電算写植へと進化しました。 画像処理の世界では、CEPS(セップス)と呼ばれる巨大なシステムが登場。1セット数億円もするこのスーパーコンピュータは、写真をデジタルデータとして取り込み、魔法のような画像合成を可能にしました。 しかし、これらはまだプロだけの閉じた世界の話でした。

2. DTP革命:デザインの民主化
すべてを変えたのは、1980年代後半からの第9波「PCとネットワーク」の時代です。 AppleのMacintosh、AdobeのPostScript、そしてDTPソフトの登場により、数億円のシステムで行っていた作業が、机の上(Desktop)のパソコン一台で完結するようになりました。これがDTP(Desktop Publishing)革命です。
デザイナーは自分でレイアウトし、フォントを選び、写真を配置して、そのデータを直接印刷工場に送る(CTP技術)ことができるようになりました。これにより、印刷物の制作コストと時間は劇的に圧縮され、フリーペーパーや小規模な出版物が爆発的に増えました。

3. データベース・マーケティングの幕開け
デジタル化の恩恵は制作だけではありません。顧客データを管理し、ターゲットに合わせてダイレクトメール(DM)を送るデータベース・マーケティングが本格化しました。 「全員に同じチラシ」ではなく、「あなたに興味がありそうな商品のお知らせ」を送る。ITの力が、印刷物をマス媒体からパーソナル媒体へと変え始めたのです。
4. この時代の代表的な印刷事例
デジタル化の衝撃を知るための事例検索ワードです。
事例1:ライノタイプからデジタルへの移行 (Linotype to Digital)
解説: 鉛の活字を鋳造する「ライノタイプ」という機械が、いかにして写真植字、そしてデジタルへと置き換わっていったかを描いたドキュメンタリー映画の予告や抜粋が参考になります。技術の断絶と継承のドラマがあります。
事例2:初期のMacによるDTP (Early Mac DTP)
解説: 1980年代後半、初期のMacとPageMakerを使ってどのようにレイアウトを行っていたかのデモ動画。現代のInDesignに繋がる原点がここにあります。
まとめ:プロセスの開放と競争の激化
ITと自動化は、印刷を「特権的な職人芸」から「誰でもアクセス可能な技術」へと変えました。 これにより印刷業界は激しい価格競争にさらされることになりますが、同時に、誰もが情報を美しく発信できる自由を手に入れました。現代のクリエイターエコノミーのインフラは、この時代の技術革新によって整備されたのです。


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