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在庫はいらない、必要なのはデータだけ。12のイノベーション・ウェーブ (The 12 Innovation Waves) が描く「WebとAI」時代の印刷革命

更新日:1月14日

Amazonで注文した本が、実は「注文を受けてから1冊だけ印刷されたもの」だとしたら、驚きますか? インターネットとAIの普及は、印刷産業を「大量生産の工場」から「データ出力のサービス業」へと根底から作り変えつつあります。 本記事では、12のイノベーション・ウェーブ (The 12 Innovation Waves) の最新フェーズ、第4次産業革命期(第10波〜第12波)における、印刷とデジタルの融合(Phygital)について解説します。


1. Web-to-Print:ネットが印刷の受付窓口に

1990年代後半からの「WebとEコマース」の時代(第10波)。インターネットは印刷の敵だと言われましたが、実は最強の味方でした。


Web-to-Printの登場により、顧客はブラウザ上で名刺やチラシをデザインし、ワンクリックで発注できるようになりました。集まった膨大な小ロット注文を、ITが自動的に整理し、大きな紙に無駄なく配置して(ギャンギング)一気に刷る。これが「ネット印刷通販」の安さの秘密です。


スマートファクトリーのイメージ
スマートファクトリーのイメージ

2. 「あなただけ」の一枚:バリアブル印刷とAI


さらに進んで、「モバイルとソーシャル」「AIとIoT」の時代(第11・12波)へ。 デジタル印刷機は版(ハンコ)を使わないため、1枚ごとに内容を変えることができます。これを活用したのがバリアブル印刷です。 例えば、AIがあなたの購買履歴を分析し、「そろそろこのサプリがなくなりませんか?」というメッセージと共に、あなたの名前入りでクーポンを印刷して送ってくる。これはプログラマティック・プリントと呼ばれ、デジタル広告が見られなくなった現代において、非常に高い効果を発揮しています。


3. スマートファクトリーとIoT


工場の中も進化しています。印刷機には無数のIoTセンサーが取り付けられ、振動や温度を監視。AIが故障を予知したり(予知保全)、色調を自動で補正したりします。 熟練工の「勘」が、AIという「知能」に置き換わり、24時間無人で動き続ける自律的な生産システムが実現しつつあるのです。


現実の紙メディアと、デジタルの情報が重なり合っている「フィジタル(Phygital)」のイメージ
現実の紙メディアと、デジタルの情報が重なり合っている「フィジタル(Phygital)」のイメージ

4. この時代の代表的な印刷事例


  • 事例1:HP Indigoによるパーソナライズ印刷 (Personalized Packaging)

    • 解説: コカ・コーラが数百万種類の異なるデザインのラベルをデジタル印刷機(HP Indigo)で製造した有名なキャンペーン。マスプロダクションなのに、すべてがユニーク。バリアブル印刷の威力が分かります。


  • 事例2:Amazonのオンデマンド印刷 (Print on Demand)

    • 解説: 注文が入ってから本を印刷・製本し、発送するまでのプロセス。巨大な倉庫ではなく、データと印刷機があれば在庫リスクなしで出版ができる仕組みです。



まとめ:製造業からサービス業へ


この時代、印刷は「モノ作り」から「情報加工サービス」へと進化しました。 「刷ってから売る」のではなく、「売れてから(必要とされてから)刷る」。デジタルと物理(紙)をシームレスに繋ぐこの柔軟性こそが、これからの商業印刷の生存戦略なのです。

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