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​本間充的カンヌクリエィティブ・フェスティバル研究(2023年)

2022年とは複雑な年だったのですね

カンヌクリエィティブ・フェスティバルは、主に前年の広告、マーケティング・キャンペーンについて議論を行います。したがって、2022年に何が世界であったのかは、広告の受賞作品に大きな影響を与えます。そこで、まず2022年に何があったのか、少し振り返っておきましょう。

  • 2月

    • ロシア、ウクライナ侵略開始(2/24)

  • 5月​

    • 北欧2か国、NATOに加盟申請(5/18)

  • 8月​

    • 新型コロナ感染、6億人突破(8/26)

  • 9月​

    • エリザベス英女王死去(9/8)

  • 10月​

    • ​マスク氏、ツイッター社買収完了(9/27)

    • ソウル・梨泰院で雑踏事故(9/29)

  • 11月​

    • 米中間選挙、野党・共和党が下院勝利(11/8)

    • W杯カタール大会開幕(11/20〜12/18)

​あくまで、私の勝手な選択ですが、何か不安定な時期で、あまり明るいニュースが多くなかった1年だったのかもしれない。

ビールが飲めないワールドカップサッカー、オフィシャル・ビールースポンサーは?

オリンピックや、ワールドカップサッカーは、広告主にとっては、マーケティングの一つのきっかけになります。しかし、コロナ(covid-19)の登場以後、しばらく人の集まるイベントと、広告・マーケティングとは、少し疎遠になっていました。

2022年は、コロナの終焉も見え始め、その中で開催されたワールドカップサッカー・カタール大会は、グローバル・ブランドの広告主としては、有効に活用したいイベントの一つでした。

実際、テレビコマーシャルでは、オフィシャルスポンサーの強みを活かし、サッカーのスーパープレーヤーを起用した広告の流しました。

​しかし、問題がありました。開催地、カタールは禁酒の国なのです。つまり、テレビ観戦ではビールが飲めても、現地の観戦ではビールが飲めない。

そこで、バドワイザーは、ビールをサッカーの参加国に送ることにしたのです。会場で飲めないのなら、応援しているHomeの国で飲んでくれと。

​どこまで、このストーリーを設計していたかは、わからないのですが、機転が効いています。

LGBTQが表明できない、ワールドカップサッカー

今回のワールドカップサッカーは、中東で開催されたことで、過去になかったことが、数多くありました。飲酒ができないこともその一つ。他にも、LGBTQを認めていないことも問題になりました。

それに挑戦したのが、Pantoneの« Colors Of Love » Qatar 2022でした。レインボーカラーを、色で表現sるのではなく、パントーンの色番号で表記するという取り組みでした。

屋外広告と印刷

屋外広告も、進化し続けています。そして、面白いことは、昔の手法が、時代が経つと、新しい手法に感じることです。2023年のカンヌクリエィティブ・フェスティバルでは、ブリティッシュエアウェイズが面白い広告を紹介しました。

屋外広告を同じ表示ではなく、それぞれ変更させるのです。あなたの旅行の目的は?そして、さまざまな目的を、屋外広告jに表現します。

このことにより、旅行の面白さを、思い出させることになり、旅行への思いを強くさせることが可能になるのでしょう。

屋外広告は、いつしか印刷技術により、すべての看板で同じ表現が掲出されるようになりました。しかし、以前は屋外広告も、人がペイントしていた時期があり、その頃は、看板ごとに違う​クリエィティブが掲出されていた時期もあるのです。その意味では、このアイディアは温故知新なのです。

​人工知能は、広告にどのような影響を与えるのか?

2023年は、ChatGPTなど、人工知能の話題が多く登場した年です。広告の制作の現場でも、画像生成や、音声認識などが、活用されるようになりました。が、問題になるのは、人工知能で生成されたものが、本物と誤認される点です。これは、多くのクリエーターにとって、頭の痛い問題です。

​この問題に、提案したのが、IntelのCERTIFIED HUMANという取り組みです。これが、ソリューションなのか、取り組みを伝える広告なのかといえば、意見が分かれるところでしょう。しかし、AIの作った映像と、本物の人物では、血流の有無に違いがあるので、それにより、AI画像と、自然の人間を見分けようという取り組みは、ユニークです。そして、このような技術は今後も登場するのでしょう。

環境問題への取り組みや、サプライヤーへの配慮は、重要なコーポレート・ブランディング

近年、消費者は、商品を購入する時に、商品の良し悪しだけではなく、その商品を生み出した会社、その会社の社会との関わり方なども、考慮することが増えました。環境負荷を考慮したものづくりを行なっているか。関係する会社や、労働者に、適切な配慮を行なっているかなどです。

ポテトチップスのLay'sが、インドで取り組んだのが、「Lay’s Smart Farm」です。人工衛星のデータ活用して、Lay'sのポテトを生産する農家に、適切な栽培方法をアドバイスする取り組みです。

​個別の農家が、取得できない、人工衛星のデータをLay'sが提供することで、それぞれの農家の収穫を支援します。結果として、農薬の適切散布や、温暖化への対応を行うことで、地球にも、そして農家の支援になっています。

ビールのコロナは、ライムの農家の支援を行いました。コロナ・ビールには、カットされたライムがよく合います。このライム、お店では、お店がコロナと無関係に、ライムを入手して、ビールに加えるのが普通です。しかし、そのライムが入手困難になったら、どうでしょうか?

そこで、コロナは、中国の農家に対して、ライムの生産のアドバイスを行い、さらにライムを販売するときに、コロナのブランドを付与して、売ることを支援したのです。

​結果、中国のライムの販売量は増え、そしてライムの安定供給にも繋がっているようなのです。

日本は、鉄道の国?

​日本の作品も紹介しましょう。日本からは、鉄道に関する広告が2つあったので、紹介しましょう。

一つは、JRのデジタル・駅スタンプです。駅に置かれている、駅スタンプをデジタルにして、あなたのスマートフォンでコレクションしませんか?というものです。

​きっと、海外の方には、知らない文化なので、アジア=ハンコのイメージがあるので、それも受賞の理由になったかもしれませんね。

2つ目は、相鉄の広告です。デジタル時代に、アナログな広告のクリエィティブは面白いですね。もちろん、このクリエィティブには緻密なシミュレーションがあるのでしょう。そして、言葉が少なくても、さまざまなことを伝えることができるのは、すごいと思います。

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