本間充的カンヌクリエィティブ・フェスティバル研究(2022)
2021年は、
カンヌクリエィティブ・フェスティバルは、主に前年の広告、マーケティング・キャンペーンについて議論を行います。したがって、2021年に何が世界であったのかは、広告の受賞作品に大きな影響を与えます。そこで、まず2021年に何があったのか、少し振り返っておきましょう。
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1月
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ジョー・バイデン氏が米大統領に就任(1/20)
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4月
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米国で黒人男性暴行死の元警官が有罪(4/20)
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6月
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イスラエルで12年ぶりの政権交代(6/13)
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7月
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東京オリンピック(7/23〜8/8)
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米国で民間宇宙旅行ビジネスが活発化(7/26)
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8月
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新型コロナの世界感染者が2億人超に(8/29)
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東京オリンピックがあったのですが、カンヌでは、あまりトピックスとして扱われていなかったような。
最新デジタル技術は広告の味方?
デジタル技術は、確かに広告の表現手法を拡張しています。しかし、問題は広告に接触するほうが、デジタル表現を望んでいるか、どうか、なのかもしれません。
メタバースでは、ビールは飲めない!
カンヌクリエィティブ・フェスティバルで、2022年にメタバースが話題になりました。そして、ハイネケンが挑戦的な広告を提示しました。
ハイネケンを、バーチャル空間で楽しもうという広告です。バーチャルだと、0カロリー、いやバーチャル空間では、実際にはビールは味わえないのです。
やや皮肉ともとらえられるこの広告、実は多くの広告主が、反省したのではないでしょうか。広告主の中には、メタバースに自社のロゴや、ブランドの掲載を考えていた人も多かったのですが、それは、本当にバーチャル空間のユーザーにとって望まれて否たことなのか。
バーチャル空間を楽しんでいるのは人です。そして、人は、ビールを実際に味わいたいのです。
屋外広告×スマートフォンアプリ=デジタル鬼ごっこ
デジタルを使って、実際に「人」を動かす広告で面白い事例が、2022年のバーガーキングの、"Whopper Heist"です。
デジタルサイネージ(デジタル化された屋外広告)とスマートフォンのアプリを連動し、ユーザーにハンバーガーをプレゼントする広告です。
ユーザーが、ある屋外広告でハンバーガをGetすると、屋外広告からはそのハンバーガーが消滅します。
デジタルでは、一般に他人の行動が見えにくくなることが多いのですが、この広告はその反対です。目の前の、広告にはもうハンバーガーの絵がないとわかると、興味のあるユーザーなら、少し歩いて、バーガーキングの屋外広告を探しに行くのでしょう。
いわば、この広告は、デジタル鬼ごっこなのです。
リアル屋外広告
オリンピック・イヤーであった、2021年。近年のオリンピックには、さまざまな社会課題と直面しています。その一つに、取り組んだのが、adidasの「Liquid Billboard」という広告、キャンペーンです。宗教上の問題から、女性が外で泳ぐことを、良いと思っていない人達も、存在しています。しかし、泳いで良いよね、というメッセージングづくりのための広告です。
この広告から、私たちは、いつしか屋外広告は、「看板」「ポスター」「サイネージ」でないといけないと思っていたことが、表現の壁になっている点を学びました。「屋外広告」とは、「屋外」に「掲出する広告」であり、表現手法は、まだ無限にあるのでしょう。