top of page
MSL

モノクロの世界に「色」がついた!12のイノベーション・ウェーブ (The 12 Innovation Waves) が語る、ポスターとパッケージの黄金時代

更新日:1月14日

商品が売れるためには、何が必要でしょうか?機能?価格? 答えの一つは「見た目の魅力」です。 産業革命が進み、市場にモノが溢れ始めると、ただ「ある」だけでは売れなくなりました。そこで印刷技術は、化学の力を借りて「色彩(カラー)」という武器を手に入れます。 本記事では、12のイノベーション・ウェーブ (The 12 Innovation Waves) の中から、第2次産業革命期(第3波〜第6波)に焦点を当て、印刷がいかにして人々の「欲望」を刺激するメディアへと進化したのかを解説します。


1. 化学がもたらした「色の民主化」

19世紀半ばまでの印刷物は、基本的に黒一色でした。色は手作業で塗るしかなく、非常に高価だったのです。しかし、「鉄鋼と化学」の時代(第3波)に合成染料が発明され、状況は一変します。


ここで花開いたのが「クロモリトグラフィー(多色石版印刷)」です。水と油の反発を利用したこの技術は、熟練の職人が何版も色を重ねることで、まるで絵画のような深みのあるポスターやカードを大量生産することを可能にしました。


ジュール・シェレやロートレック風の、鮮やかで芸術的な色彩のポスター
ジュール・シェレやロートレック風の、鮮やかで芸術的な色彩のポスター

2. パッケージは「沈黙のセールスマン」


大量生産された缶詰やタバコ、石鹸。中身が見えないこれらを売るために、印刷されたパッケージ(ラベル・箱)が極めて重要な役割を果たしました。 鮮やかな色のラベルは、棚に並んだ時に他社製品との違いを際立たせ、「これを買うと素敵な生活が待っている」という物語を消費者に語りかけます。パッケージはまさに「沈黙のセールスマン」として機能し始めたのです。


3. 写真の登場と「ありのまま」の衝撃


さらに時代が進み、「電力と通信」の時代(第4波)になると、ハーフトーン(網点)技術が確立されます。これにより、写真を点々の集まりに変換して印刷できるようになりました。 新聞や雑誌に、イラストではなく「現場の写真」が載る。これは情報のリアリティを劇的に高めました。「百聞は一見に如かず」をマスメディアが実現したのです。 そして20世紀初頭、「大量生産と自動車」の時代(第5波)には、オフセット印刷が登場し、より鮮明に、より大量に、美しい広告や雑誌が刷られるようになりました。



1950年代のアメリカの雑誌スタンド
1950年代のアメリカの雑誌スタンド

4. この時代の代表的な印刷事例


色彩と写真が広告を変えた瞬間を、以下の事例で確認してみましょう。


  • 事例1:クロモリトグラフィーの工程 (Chromolithography Process)

    • 解説: 19世紀後半、どのようにして石の版を使ってあれほど鮮やかな多色刷りを行っていたのか。職人が一色ずつ重ねていく気の遠くなるような、しかし魔法のような工程が見られます。


  • 事例2:シアーズ・カタログの歴史 (Sears Roebuck Catalog)

    • 解説: 19世紀末から20世紀初頭のアメリカで、「Amazonの先駆け」として機能した巨大通販カタログ。数千ページに及ぶ商品とイラスト(後に写真)が、どのように全米の家庭に「消費文化」を届けたかが分かります。


まとめ:感性に訴えるマーケティングの夜明け

この時代、商業印刷は「情報を伝える道具」から「感情を動かす装置」へと進化しました。 美しいポスター、魅力的なパッケージ、リアリティのある写真。これらはすべて、消費者の理性ではなく感性に訴えかけ、購買意欲を喚起するためのイノベーションでした。現代のインスタ映えや動画広告のルーツは、化学と電力がもたらしたこの「色彩革命」にあるのです。

次のページ


前のページ


この特集の目次

コメント


(C) 株式会社マーケティングサイエンスラボ

(C) MSL,2020-2025

bottom of page