テレビの衝撃からインターネットの誕生へ。「12のイノベーション・ウェーブ (The 12 Innovation Waves)」が描くデジタルの胎動
- 本間 充/マーケティングサイエンスラボ所長

- 2025年12月18日
- 読了時間: 4分
更新日:1月14日
「12のイノベーション・ウェーブ (The 12 Innovation Waves)」を追う旅、第3章は第3次産業革命期、つまり「情報技術(IT)」の黎明期から発展期にあたる第7波から第10波(1940年代後半〜2000年代後半)を見ていきます 。 ここでの主役は、なんといっても「テレビ」と「コンピュータ」、そして「インターネット」です。
7. 「コンピュータと原子」の時代:テレビCMという最強の武器
1950年代、テレビがお茶の間に普及しました 。これは広告史における最大の革命の一つです。
デモンストレーションとクリエイティブ革命
テレビCMは、映像と音で商品の性能を実証する「デモンストレーション」を可能にしました 。洗剤の汚れ落ちや掃除機の吸引力を目の前で見せられるのです。 やがて1960年代に入ると、単なる機能説明ではなく、ユーモアや鋭い洞察(インサイト)で心を掴む「クリエイティブ革命」が起きます 。DDBによるフォルクスワーゲンの広告などがその象徴です 。

8. 「ICと自動化」の時代:イメージとセグメント
1960年代から80年代、技術の均質化により、機能だけで差をつけるのが難しくなりました 。
情緒的価値とターゲットの細分化
そこで企業は、製品そのものより、そのブランドが持つ「世界観」や「ライフスタイル」を売る「ブランド・イメージ広告」へとシフトします 。 また、コンピュータによるデータ分析が進み、全員に売るのではなく、特定の層(セグメント)を狙い撃ちする「ターゲット・マーケティング」が始まりました 。
9. 「PCとネットワーク」の時代:デジタルの足音
1980年代後半、パーソナルコンピュータ(PC)が登場し、制作現場と顧客接点を変えました 。
DTPと「個」へのアプローチ
Macintoshなどの登場でDTP(Desktop Publishing)が普及し、デザイン制作が効率化されました 。 また、初期のインターネットやPOSデータを活用した「データベース・マーケティング」により、画一的なマス広告ではなく、個人の購買履歴に基づいたダイレクトメールなどを送る手法が生まれました 。
10. 「WebとEコマース」の時代:検索とクリックの衝撃
1990年代後半、WWW(World Wide Web)とブロードバンドが普及し、広告は「双方向」になります 。
検索連動型広告と効果測定
Googleの登場により、ユーザーが自ら入力したキーワードに対して広告を出す「検索連動型広告(リスティング広告)」が発明されました 。これは、消費者の「今、これが欲しい」という顕在ニーズを捉える革命的な手法でした 。 さらに、バナー広告やアフィリエイト広告など、クリックや購入といった成果が数字で見えるようになり、広告は「投資対効果(ROI)」を厳密に管理する時代へと突入しました 。

この時代の代表的な広告事例
IT革命期を彩った伝説的な広告を2つご紹介します。
① Apple「1984」
1984年、Macintoshの発売に合わせて放映されたテレビCMです。ジョージ・オーウェルの小説『1984年』をモチーフに、支配者(当時のIBMのメタファー)を打ち砕くハンマー投げの女性を描き、「個の解放」を訴求しました。製品を一切見せず、ブランドの思想だけを伝えたマスターピースです。
解説: リドリー・スコット監督による映画のような映像美と、当時のコンピュータ業界の閉塞感を打ち破るメッセージ性が確認できます。
② Burger King「Subservient Chicken(従順なニワトリ)」
2004年のWebキャンペーンです。サイト上で巨大なニワトリの着ぐるみを着たキャラクターにコマンド(命令)を入力すると、その通りに動く映像が流れるというバイラル・マーケティングの先駆けです。「思い通りになる」という商品(チキンサンド)のコンセプトを、ブロードバンド時代のインタラクティブ性で表現しました。
解説: 当時のウェブサイトの様子や、ユーザーが入力した様々なコマンドに反応するニワトリの映像まとめが見られ、Web広告の双方向性の面白さを体感できます。
テレビによるマスの支配から、Webによる個への接近。「12のイノベーション・ウェーブ (The 12 Innovation Waves)」は、いよいよ現代の「データとAI」の時代へと繋がります。


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