個人の反乱:12のイノベーション・ウェーブ (The 12 Innovation Waves) が予見した「デジタル・アンバンドリング」と検索経済
- 本間 充/マーケティングサイエンスラボ所長

- 1月8日
- 読了時間: 4分
更新日:1月14日
「みんなと同じものを見る」時代から、「自分が見たいものだけを見る」時代へ。第3次産業革命期は、巨大なマスメディアがデジタル技術によって解体(アンバンドリング)されていくプロセスでした。
「12のイノベーション・ウェーブ (The 12 Innovation Waves)」の第7波から第10波は、コンピュータとインターネットがいかにして権力を個人に取り戻させ、そして既存メディアの収益構造を破壊したかを物語っています。
1. マスの解体と選択の自由(第7・8の波)
コンピュータとIC(集積回路)の進化は、メディアを細分化しました。ケーブルテレビの登場により、「全米が見る番組」から、ニュース(CNN)や音楽(MTV)などの「専門チャンネル」へと好みが分かれ始めました(セグメンテーション)。
さらに決定的だったのが、VCR(ビデオデッキ)やウォークマンです。これらは、放送局が決めた「時間」と「場所」の束縛から私たちを解放しました 。録画してCMをスキップする。好きな音楽を外で聴く。メディア消費の主導権が、送り手から受け手へと移り始めたのです。

2. ネット、検索、ロングテール(第9・10の波)
そして90年代、PCとインターネット(Web)が世界を変えます。最大の影響はコンテンツの「アンバンドリング(バラバラになること)」です。 新聞は「1枚の記事」に、音楽アルバムは「1曲」に解体され、私たちは欲しい部分だけを検索して消費するようになりました 。
AmazonなどのECサイトは、物理的な棚の制限を取り払い、ニッチな商品でも利益が出る「ロングテール」モデルを確立しました 。一方で、新聞社のドル箱だった「案内広告(三行広告)」は、Craigslistなどの無料サイトに代替され、旧来メディアの収益基盤は崩壊しました(Craigslist効果)。
3. 歴史的メディア活用事例
この時代の「個の力」を象徴する事例です。
事例:Amazonと「ロングテール」
実店舗の本屋では、売れ筋のベストセラー(ヘッド)しか置けません。しかしAmazonは、年に数冊しか売れないマイナーな本(テール)を何万種類も扱うことで、ベストセラーに匹敵する売上を作ることを証明しました。 これは「検索」という技術があって初めて成立した、Web特有の勝利の方程式です。
4. 結論:検索エンジンの覇権
第7〜10の波は、メディアの流通コストを極限まで下げ、「検索」を新たな王座に就かせました。しかし、12のイノベーション・ウェーブ (The 12 Innovation Waves) はここで止まりません。ポケットの中の「あのデバイス」が、私たちの脳をハックし始めるのです。

メディアと技術の変遷
時代区分 | イノベーションの波 | 基幹技術 | メディア・ビジネスモデルの変遷 | 社会的・マーケティング的インパクト |
第1次 | 1. 蒸気と工場 | 蒸気機関 | 受注生産 → 見込み生産(新聞) | 情報の同期性、ニュースの商品化 |
2. 鉄道と輸送 | 鉄道・電信 | 高価格紙 → ペニープレス(広告モデル) | アテンション・エコノミーの萌芽、市場の全国化 | |
第2次 | 3. 鉄鋼と化学 | 化学染料 | 文字情報 → 色彩(ポスター、パッケージ) | イメージ広告、消費文化の形成 |
4. 電力と通信 | 電話・写真 | 文字報道 → 写真報道(イエロー・ジャーナリズム) | 視覚的衝撃、通信による速報性 | |
5. 大量生産 | ラジオ・生産ライン | 点のメディア → 放送(スポンサーシップ) | ナショナルブランドの確立、ながら消費 | |
6. マスメディア | テレビ | ラジオ・映画 → TV(マス広告モデル) | 視聴覚の占有、受動的消費の極致 | |
第3次 | 7. コンピュータ | トランジスタ | マス → セグメンテーション(専門誌) | データ処理の産業利用 |
8. ICと自動化 | IC・VCR | 放送 → 多チャンネル・時間シフト | メディアの細分化、個人の選択性の向上 | |
9. PC/ネット | PC・Web | 物理在庫 → ロングテール(EC) | 制作・流通の民主化、物理制約の撤廃 | |
10. Web/EC | 検索・ブロードバンド | パッケージ → アンバンドリング(検索広告) | 検索経済、既存メディア(新聞等)の収益崩壊 | |
第4次 | 11. モバイル | スマホ・SNS | 検索 → フィード(ターゲティング広告) | 常時接続、アルゴリズムによるアテンション支配 |
12. AIとIoT | 生成AI・エージェント | アテンション → インテンション(代理消費) | デジタルメディアの代替、真正性の回帰、Zero UI |



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