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大衆の心を掴め:12のイノベーション・ウェーブ (The 12 Innovation Waves) が描く「マスメディア」の黄金時代

更新日:1月14日

モノクロの世界から、極彩色のポスターへ。静寂のリビングから、ラジオやテレビの音が溢れる空間へ。第2次産業革命期は、私たちの「感覚」を拡張した時代でした。

「12のイノベーション・ウェーブ (The 12 Innovation Waves)」の中盤戦、第3の波から第6の波にかけて、メディアは「情報を伝える」道具から、「大衆の欲望を刺激する」装置へと劇的な進化を遂げます。現代のブランド広告やテレビCMのルーツがここにあります。


1. 色彩と写真の衝撃(第3・4の波)


19世紀後半、化学技術の発展により、街は「色」で溢れかえりました(第3の波)。多色石版印刷(クロモリトグラフィー)の発明は、商品を単なる機能の塊から、憧れのライフスタイルを象徴する「イメージ」へと変えました 。ポスターは街頭の美術館となり、パッケージは「沈黙のセールスマン」として店頭で客を呼び込みました。


さらに、電力と写真技術(第4の波)がジャーナリズムを変えます。「イエロー・ジャーナリズム」の台頭です。文字だけでなく、センセーショナルな写真と見出しで感情を揺さぶる手法が確立されました 。これは、現代のSNSでバズる画像の先駆けと言えるでしょう。


「色」が欲望を喚起する。イメージ広告の誕生。
「色」が欲望を喚起する。イメージ広告の誕生。

2. 「ながら消費」と「お茶の間の王様」(第5・6の波)


20世紀に入り、フォードの大量生産システムと共にやってきたのが「ラジオ」です(第5の波)。ラジオは、家事をしながらでも聴ける「ながらメディア」として家庭に入り込みました。ここで生まれたのが、番組と広告が一体化した「スポンサーシップ」モデルです 。


そして、第6の波で登場した「テレビ」は、すべてを塗り替えました。視覚と聴覚を同時にジャックするテレビは、国民全員が同じ時間に同じ番組を見るという、史上最強の「同期行動」を作り出しました。ゴールデンタイムの30秒スポット広告に企業が巨額を投じる「マス広告モデル」の完成です 。


3. 歴史的メディア活用事例


この時代のマーケティングの天才的な発明を紹介します。

事例:P&Gと「ソープオペラ」

ラジオ全盛期、洗剤メーカーのP&Gは、主婦層をターゲットにした連続ラジオドラマの制作費を提供しました。劇中で自社の石鹸(ソープ)の宣伝を巧みに織り交ぜたことから、これらは「ソープオペラ」と呼ばれるようになりました 。 これは、コンテンツマーケティングの元祖であり、「ターゲットの生活時間に入り込む」という戦略の完璧な実行例です。


4. 結論:受動的消費の極致へ

第3〜6の波を通じて、メディアは一方的に情報を浴びせる強力なパワーを持ちました。私たちはテレビの前でただ座って口を開けていれば、楽しい情報が流れ込んでくる「受動的(パッシブ)な消費者」となったのです。しかし、次の波がその構造を破壊し始めます。


20世紀最強の魔法「テレビ」。数千万人が同時に同じ夢を見る時代の到来。
20世紀最強の魔法「テレビ」。数千万人が同時に同じ夢を見る時代の到来。


メディアと技術の変遷

時代区分

イノベーションの波

基幹技術

メディア・ビジネスモデルの変遷

社会的・マーケティング的インパクト

第1次

1. 蒸気と工場

蒸気機関

受注生産 → 見込み生産(新聞)

情報の同期性、ニュースの商品化


2. 鉄道と輸送

鉄道・電信

高価格紙 → ペニープレス(広告モデル)

アテンション・エコノミーの萌芽、市場の全国化

第2次

3. 鉄鋼と化学

化学染料

文字情報 → 色彩(ポスター、パッケージ)

イメージ広告、消費文化の形成


4. 電力と通信

電話・写真

文字報道 → 写真報道(イエロー・ジャーナリズム)

視覚的衝撃、通信による速報性


5. 大量生産

ラジオ・生産ライン

点のメディア → 放送(スポンサーシップ)

ナショナルブランドの確立、ながら消費


6. マスメディア

テレビ

ラジオ・映画 → TV(マス広告モデル)

視聴覚の占有、受動的消費の極致

第3次

7. コンピュータ

トランジスタ

マス → セグメンテーション(専門誌)

データ処理の産業利用


8. ICと自動化

IC・VCR

放送 → 多チャンネル・時間シフト

メディアの細分化、個人の選択性の向上


9. PC/ネット

PC・Web

物理在庫 → ロングテール(EC)

制作・流通の民主化、物理制約の撤廃


10. Web/EC

検索・ブロードバンド

パッケージ → アンバンドリング(検索広告)

検索経済、既存メディア(新聞等)の収益崩壊

第4次

11. モバイル

スマホ・SNS

検索 → フィード(ターゲティング広告)

常時接続、アルゴリズムによるアテンション支配


12. AIとIoT

生成AI・エージェント

アテンション → インテンション(代理消費)

デジタルメディアの代替、真正性の回帰、Zero UI

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