MUSE:ミカエラ・シフリン×P&Gに学ぶ、2026年ミラノ五輪を見据えた「SNS・ConnectedTV第一主義」のマーケティング戦略
- 本間 充/マーケティングサイエンスラボ所長

- 2月27日
- 読了時間: 4分
このコマーシャルの特徴
このコマーシャルは、世界最高峰のアルペンスキーヤー、ミカエラ・シフリン選手を起用した、P&Gによる次世代型のオリンピック・キャンペーンです。
従来のお茶の間向け15秒・30秒テレビCMとは一線を画し、スマートフォンでの視聴に特化した「縦長動画」として制作されています。2026年ミラノ・コルティナ冬季五輪に向けて、P&Gはテレビ広告からConnected TV (CTV) やSNSを中心としたデジタル広告へと劇的なシフトを遂げており、この動画はその戦略を象徴する一枚と言えます。
プロの映像美を保ちつつ、アスリートが自宅や練習拠点で「Swiffer(クイックルワイパーのような清掃用品)」を日常的に使っているという『親近感』と『リアルなルーティン』を強調しているのが最大の特徴です。視聴者のデータに基づき、特定のブランドを出し分けるターゲティング戦略のフロントエンドとして機能しています。
English Script
Hey, I'm Mikaela Shiffrin and I'm proud to partner with P&G for the Winter Olympics. My gym room always needs a Swiffer. I find that I am most peaceful with a very clean space around me. Let's shine together at the Winter Olympics.
日本語スクリプト
こんにちは、ミカエラ・シフリンです。冬季オリンピックに向けて、P&Gとパートナーシップを組めることを誇りに思います。私のジムにはいつも、スウィッファー(Swiffer)が欠かせません。身の回りがとても清潔な状態だと、一番心が落ち着くんです。冬季オリンピックで、一緒に輝きましょう!
英会話TIPS (Speaking English)
“proud to partner with”
「〜と提携(パートナーシップ)を組むことを誇りに思う」という意味です。ビジネスシーンやマーケティング活動において、ブランド同士の協力関係をポジティブに発表する際の定番フレーズです。
Example
We are proud to partner with this NGO to support environmental conservation.
環境保護を支援するために、このNGOと提携できることを光栄に思います。
“always needs a...”
「〜にはいつも…が必要だ」「…が欠かせない」という意味。単に「必要である」と言う以上に、日常的なルーティンや必須アイテムであることを強調する際に使われます。
Example
A successful startup always needs a clear vision and a dedicated team.
スタートアップの成功には、常に明確なビジョンと献身的なチームが欠かせません。

マーケティング分析 (Marketing Understanding)
ブランドの背景:伝統的スポンサーからデジタル・テックパートナーへの進化
P&Gは長年オリンピックのワールドワイドパートナーを務めてきましたが、近年はその役割を「家庭の主婦を支えるブランド」から「アスリートのコンディションを支える生活インフラ」へと再定義しています。特に2026年ミラノ・コルティナ大会に向けた動きでは、広告費をテレビからデジタルプラットフォーム(CTVやSNS)へ大幅に振り向けています。
ターゲット:パーソナライズされたデジタルネイティブ層
この広告の主眼は、もはや「マス(大衆)」ではありません。Connected TV (CTV) の強みを活かし、「スポーツに関心がある世帯」「掃除に関心がある世帯」など、データに基づいて視聴者をセグメント化しています。ミカエラ・シフリンのようなスター選手の日常を見たいと感じる若年層から現役世代に対し、彼らが最も時間を費やすSNSのタイムライン上でリーチすることを目的としています。
マーケティング戦略:『Consistency is confidence』の具現化
P&Gが掲げる「Consistency is confidence(一貫性が自信になる)」というテーマは、アスリートが五輪という極限の環境で結果を出すために、普段使い慣れた日用品(Swiffer、Gillette、Venus等)によるルーティンが不可欠であることを示唆しています。この動画では、シフリン選手が清掃用具を使う姿を見せることで、製品が「勝利のためのマインドセットを作る道具」として位置付けられています。

特筆すべき点:アスリート自身をメディア化する「Champions Clubhouse」戦略
P&Gは選手村に「Champions Clubhouse」を開設し、アスリートに美容・身の回り品のケアサービスを提供しています。この戦略の真髄は、サービスを受けた世界中のアスリートが自らのSNSでその体験を発信することです。この動画は、公式が制作した「お手本」のようなコンテンツであり、これに触発された他の選手たちが自発的にP&G製品をSNSにアップすることで、莫大な広告費をかけずに世界中に信頼性の高い(Authenticな)口コミを拡散させる仕組みが構築されています。


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