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MUSE: SNL「Good Will Dunkin’」– 90年代の名作とボストン愛が交差する伝説的パロディ

1. イントロダクション:なぜこの映像なのか?

初回のMUSE(Marketing Understanding & Speaking English)で取り上げるのは、アメリカの長寿コメディ番組『サタデー・ナイト・ライブ(SNL)』で放映されたスケッチ(コント)、「Good Will Dunkin’」です。そして、Super Bowl LX(60)で流れた、ダンキン・ドーナツのコマーシャルです。


この映像は、ベン・アフレックの出世作である名作映画『グッド・ウィル・ハンティング』が、もしも90年代のシットコム(観客の笑い声が入るコメディドラマ)だったら?という設定で作られています。主演はもちろんベン・アフレック本人。


なぜこれがマーケティングの教材になるのか?それは、「俳優本人のパブリックイメージ(ボストン出身=ダンキン・ドーナツ狂)」を極端にデフォルメし、自虐的に笑いに変えることで、結果としてブランドへの愛着を強烈に植え付けているからです。ジェニファー・アニストンやトム・ブレイディという超豪華ゲストの使い方も含め、バイラル動画の傑作として分析します。


2. 英語スクリプト(文字起こし)


Narrator: Before the movie, a much better version of Good Will Hunting was made as a sitcom with a real genius in the lead... and some other actors.


(Title: Good Will Dunkin')


Manager: Hey Will! Did you arrange the Munchkins in the Fibonacci sequence? I got a genius working for me!


Friend (Joey-ish): If he's such a genius, then why'd he put ice in his coffee, huh?


Will: Come on Chucky, I'm just Will Hunting. I'm not a genius.


Girl: I will marry the first man that can help me with the Fibonacci sequence.


Will: *(In Joey Tribbiani's voice)* How *you* doin'?


Friend: Don't you have a girlfriend?


Will: *(Holding a photo of Jennifer Aniston)* We were on a break! I don't need her. I got everything I need right here at Dunkin'.


Mentor Figure: Hey kid. If you're still single, doing this Boston shtick and working for Dunkin' when you're 50... I'm gonna be very disappointed.


Friend: Isn't that your girlfriend?


Jennifer Aniston: You like donuts?


Will: Yeah.


Jennifer Aniston: Well this is my new boyfriend. How you like these nuts?


Tom Brady: I'm Tom.


Group: Good Will Dunkin'!



3. 完全日本語訳


ナレーター: 映画化される以前、『グッド・ウィル・ハンティング』には、はるかに優れた「シットコム(コメディドラマ)版」が存在した。本物の天才を主役に据え……あと、その他数名の役者たちで。


(タイトル:グッド・ウィル・ダンキン)


店長: おいウィル! マンチキン(一口ドーナツ)をフィボナッチ数列順に並べたのか? うちには天才が働いてるぜ!


友人: こいつがそんな天才なら、なんでコーヒーに氷なんか入れてんだよ、あ?


ウィル: よせよチャッキー、俺はただのウィル・ハンティングだ。天才なんかじゃねえよ。


女性客: フィボナッチ数列を教えてくれる男性がいたら、最初に現れた人と結婚しちゃうわ。


ウィル: (『フレンズ』のジョーイの声色で)調子はどうだい?


友人: お前、彼女いんじゃねーの?


ウィル: (ジェニファー・アニストンの写真を出して)俺たちは距離を置いてたんだよ!(ブレイク中だった!) 彼女なんか要らねえ。俺に必要なものは全部ここ、ダンキンにあるんだ。


導き手(ロビン・ウィリアムズ風の役): なあ小僧。もしお前が50歳になっても独身で、その「ボストン野郎の芸風(シュティック)」を続けてダンキンで働いてたら……俺は心底がっかりするぞ。


友人: あれ、お前の彼女じゃね?


ジェニファー・アニストン: ドーナツ好き?


ウィル: ああ。


ジェニファー・アニストン: 紹介するわ、新しい彼氏よ。「このナッツのお味はどう?」(名台詞「How do you like them apples」のパロディ)


トム・ブレイディ: トムです。


全員: グッド・ウィル・ダンキン!



4. 英会話TIPS

このコントは、90年代のポップカルチャーを知っていると爆笑できるフレーズの宝庫です。


① "We were on a break!"

直訳:「私たちは休憩中だった」


意味:「(恋人関係を)一時中断していただけだ(から浮気じゃない)!」


ドラマ『フレンズ』を見ていた人なら誰もが知る、ロス・ゲラーの伝説的な言い訳です。恋人と喧嘩して距離を置いている間に他の人と寝てしまった際、「別れたつもりはなかった」と主張するときに使われます。ここでは、ウィルが(現実では『フレンズ』のレイチェル役であるジェニファー・アニストンと交際していたブラッド・ピットなどを意識しつつ)この台詞を叫ぶという高度な内輪ネタになっています。


② "Shtick" (Boston shtick)

直訳:「お決まりの芸」「十八番」


意味:「(その人特有の)芸風、常套手段、ギミック」


イディッシュ語由来の言葉で、コメディアンの特定のスタイルや、人がいつもやる振る舞いを指します。ここでは、「ボストン訛りで労働者階級を演じるベン・アフレックのいつものスタイル」を指して自虐しています。「When you're 50(50歳になっても)」という台詞は、実際に50代になった今もダンキンのCMに出ているベン・アフレックへの痛烈な皮肉(セルフツッコミ)です。


③ "How you like them nuts?"

元ネタ:"How do you like them apples?"


意味:「どうだ、参ったか!」「ざまあみろ!」


映画『グッド・ウィル・ハンティング』で、マット・デイモンが電話番号をゲットした際に言い放つ最高に有名な決め台詞です。このコントでは、Apples(リンゴ)をDonuts(ドーナツ)に関連するNuts(ナッツ)に変えてパロディにしています。トム・ブレイディ(ニューイングランド・ペイトリオッツの英雄)という「最強の彼氏」を見せつけられ、ウィルが完全に負かされるオチに使われています。


Good Will Dunkin’
Good Will Dunkin’

5. マーケティング分析

この映像は単なるコメディスケッチですが、現代のマーケティングにおいて極めて重要な要素を含んでいます。


ターゲット:90年代ノスタルジー層と地域コミュニティ

主なターゲットは、映画『グッド・ウィル・ハンティング』やドラマ『フレンズ』をリアルタイムで視聴していたジェネレーションXやミレニアル世代です。同時に、ダンキン・ドーナツを「地元の誇り」とするボストン市民(ニューイングランド地方)の心に強く訴えかけます。今回のスーパーボウル(Super Bowl)は、ニューイングランド・ペイトリオッツと、シアトル・シーホークスの試合だったので、タイミングもBestでした。


戦略:メタ構造と自虐(Self-Deprecation)

この映像の天才的な点は、「ベン・アフレックはいつまでボストン×ダンキンのキャラを擦り続けるのか?」という世間の批判的な視線を、自らネタにして笑いに変えたことです。


  • 弱みの転換

    • 「50歳になってもダンキンで働いていたらがっかりだ」という台詞をベン本人に言わせることで、逆に「そこまでダンキンを愛している」という揺るぎないブランド・アンバサダーとしての地位を確立しました。

  • クロスオーバー効果

    • 『グッド・ウィル・ハンティング』の世界に『フレンズ』の要素(ジェニファー・アニストン)とボストンの英雄(トム・ブレイディ)を混ぜることで、複数のファン層を一気に惹きつけました。

ドーナツのマーケティングでもターゲット理解は重要
ドーナツのマーケティングでもターゲット理解は重要

学べること:ブランドと「顔」の一体化

Nikeにおけるマイケル・ジョーダンのように、Dunkin'におけるベン・アフレックは、もはや切っても切れない関係です。企業がインフルエンサーを起用する際、単に有名なだけではなく、その人の人生やキャラクターそのものがブランドの文脈と一致しているかが重要です。このスケッチは、彼が「公式に」ダンキンの顔になる前のSNLでの一幕ですが、この「本物感(Authenticity)」こそが、後に実際のスーパーボウルCM(The DunKings)へと繋がる成功の鍵でした。


洗練されたかっこいい広告よりも、時には「泥臭い地元愛」や「本人による自虐」の方が、消費者の深い共感を呼ぶことがあるのです。

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