【祝49回】AIは敵か味方か?人気連載「新しいマーケティングのすすめ」が示す、これからのマーケターが歩むべき道
- 本間 充/マーケティングサイエンスラボ所長
- 7月1日
- 読了時間: 5分
変化の激しい現代市場。その中で奮闘するマーケターにとって、確かな羅針盤となるような存在は非常に心強いものです。株式会社インテージのオウンドメディア「知るギャラリー」で連載されている人気コラム、「新しいマーケティングのすすめ」が、このたび49回目の公開を迎えました。
いよいよ次回は50回という大きな節目を迎えるこの連載が、なぜ多くのマーケターに支持され、読み継がれているのでしょうか。
それは、この連載が単なるトレンド解説やノウハウ紹介に留まらず、「マーケティングの本質とは何か」「変化する市場とどう向き合うべきか」という、時代を超えた問いを私たちに投げかけ続けてくれるからです。
本記事では、この記念すべきタイミングで、連載の原点から最新のテーマである「AIとの向き合い方」までを紐解き、これからのマーケターが歩むべき道を探ります。
【祝49回】aiは敵か味方か?人気連載「新しいマーケティングのすすめ」が示す、これからのマーケターが歩むべき道原点回帰:なぜ今、「新しい」マーケティングが必要なのか?
そもそも、なぜこの連載は「新しいマーケティング」という名を冠しているのでしょうか。その答えは、記念すべき「新しいマーケティングのすすめ」第1回のコラムに明確に記されています。
筆者は、多くの企業やマーケターが、かつて大きな成功を収めた「マス・マーケティング」の幻想から抜け出せずにいることに警鐘を鳴らします。市場が成熟し、人口が減少していく現代において、市場占有率(シェア)の拡大だけを追い求める戦略はもはや通用しません。
"時代に合った「マーケティング戦略」そのものを創造的に考えることが重要"
ここで重要なのは、デジタル・マーケティングやアド・テクノロジーといった「戦術」に飛びつく前に、まずは「戦略」そのものを見直すべきだという視点です。顧客一人ひとりと向き合い、LTV(顧客生涯価値)や利益率といった、事業の持続的成長に直結する指標に目を向ける。市場を観察する指標も、単なる認知率から、顧客の深い理解や再購入率へとシフトさせていく。
つまり、「新しいマーケティング」とは、市場の変化に合わせてマーケターの思考と役割そのものをアップデートし続ける営みに他なりません。この連載の根底には、常にこの力強いメッセージが流れています。
時代の潮流:AIを使いこなす消費者のために、マーケターができること
連載の原点にある普遍的なメッセージ。それを現代の文脈に引きつけてくれるのが、最近のテーマである「AIとマーケティング」に関する考察です。
特に、スターバックスのAI活用事例を紹介した「新しいマーケティングのすすめ」第44回のコラムは、AIがマーケティングの現場をどう変えるのかを具体的に示してくれます。スターバックスが導入したAI「Deep Brew」は、需要予測や最適な調理タイミングの算出といった効率化に貢献するだけではありません。重要なのは、その分析データが現場の従業員にも開放されている点です。
これにより、データサイエンティストではない店舗スタッフが、自らデータに基づいた改善提案を行えるようになり、組織全体の学習能力向上につながっているというのです。AIは人間の仕事を奪うのではなく、むしろ従業員の成長を促し、能力を拡張するパートナーになり得る。この視点は、AIに対して漠然とした不安を抱くマーケターにとって、大きな希望となるはずです。
そして、最新の「新しいマーケティングのすすめ」第49回では、視点をさらに消費者側へと移します。
AIチャットボットによる24時間365日の問い合わせ対応。個人の趣味嗜好に最適化された商品レコメンデーション。オンラインとオフラインの垣根をなくし、シームレスな購買体験を提供するOMO(Online Merges with Offline)。
私たちは、すでにAIがもたらす便益を、日々の生活の中で当たり前のように享受しています。そう、消費者はすでに、AIを賢く使いこなしているのです。
であるならば、マーケターがすべきことは明らかです。AIを使いこなす消費者の期待に応え、それ以上の体験を提供するためには、マーケター自身が誰よりもAIを深く理解し、使いこなさなければなりません。
データドリブンな戦略を立て、パーソナライズされた顧客体験を設計し、AIを活用して新たな顧客接点を創造していく。AIを「よく分からない魔法の箱」として遠ざけるのではなく、自らの創造性を何倍にも増幅させてくれる「強力な武器」として使いこなす覚悟が、今のマーケターには求められています。
次回、いよいよ50回へ。進化は止まらない。
第1回で示された「市場に合わせて変化し続ける」というマーケティングの本質。そして、現代におけるその最大のテーマが「AIとの共存共栄」であること。
連載「新しいマーケティングのすすめ」は、49回という長い道のりの中で、一貫して「変化に対応し、未来を創造するマーケターの在り方」を示し続けてきました。
そして、次回はいよいよ50回という大きな節目を迎えます。 テクノロジーの進化が加速し、市場の不確実性が増す中で、私たちはこれからどのような「新しいマーケティング」を構想していくべきなのか。
この連載が、これからも私たちマーケターにとって、思考の海を照らす灯台であり続けてくれることを期待してやみません。まずはこの機会に、改めて第1回から最新回まで、その軌跡を辿ってみてはいかがでしょうか。きっと、あなたの目の前にある課題を乗り越えるための、新たなヒントが見つかるはずです。
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